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店主は世界一周した曹洞宗の僧侶…夜のお寺「坊主バー」に行ってきた。 VowzBar博多(博多区中洲)

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  2019/08/08   ※記事公開時の日付です

福岡の歓楽街、中洲に曹洞宗の僧侶が経営しているバーがあります。
線香は好きに焚け、「極楽浄土」や「沙羅双樹」
「灼熱地獄」なんていうカクテルがそろい、精進料理も味わえる。
それが「VowzBar博多」。坊主のバーなのです。

この看板が目印。チャージ料はありません。


僧侶の行動力に驚いた。

明治通りの一蘭を目印に北へ伸びる路地を入ると
左手に坊主バーが入っているビルがあります。

このビルの3階が「VowzBar博多」。



入口は障子で「静かにお過ごし頂く場です」との一言。



店内にはカウンター席と……。



写っていませんがこの壁際にテーブル席があります。



せっかくだから、お地蔵様と線香がすぐそばにあるカウンター席に座りました。



カウンター席には朱塗りの膳が配され、御朱印帳のメニューが置かれています。



世界のビールを冷やしている冷蔵庫。ビール(900縁)を飲むときは自分で取って栓を抜きます。


メニューの「円」はすべて「縁」と表記されています。
すると途端に金額がどうでもよくなる、と知りました。
なんせ、円ではなく縁なのですから。
言葉のチカラだなぁ。

一杯目はベルギーのピルスナーを。

店主の寛和(かんわ)和尚は高校で建築学を学んで仏教系の大学に進み、
サラリーマンとしてランドスケープの仕事などに携わっていました。
ちなみにアルバイトでは焼き鳥店や
全国展開しているスイーツショップで働き、
革職人としても仕事をしていたとか。
自作の革製の携帯ケースが素敵です。
「本当に、さまざまな仕事を経験しましたね」と和尚。
僧侶の道へ入ったのは長野県にある実家がお寺で
「いずれ自分も僧侶になる」と
子どもの頃から思っていたからでした。

「知らない人が突然家に来たら、どう思いますか」と和尚。

問いかけられ、考えて答える。これが楽しい。ビール(900縁)。


「……それってただの不審者ですよね。
でも、袈裟を着た僧侶が来たらどう思いますか」。

そもそも、いずれは僧侶になるとずっと考えていた上に
人の家に行くのに、警戒されない仕事って
そうそうないな、すごいことだなと思って、
和尚はこの道を行く、と決意されたそうでした。
とはいえ、せっかく地球に生まれたのだから世界を見てみたい。
その気持ちが高まって、今しかない!と一度仕事をやめて、
「僧侶の視点で世界を旅してみよう」と、
足かけ2年間の世界一周に旅立ったそうです。
それが5年前。
帰ったらもうずっと仕事を続ける、と決意し、
一度思い切って休むことにして。
この行動力よ。
「やりたいと思ったことはやるべきです。
みんな、思っていてもやらないから叶わない」という
言葉に重みがありました。

ちなみに、福岡に移住されたのは、仕事で訪れて
「福岡、いいなぁ。住みたいなぁ」と思ったから。
2年半前にバーをオープンして、
バーで奥様と出会ったこともあり、
「縁つなぎ」(独身向けイベント)を立ち上げていらっしゃいます。

100はあろうか、というドリンクメニュー。

坊主バーでびっくりしたのはドリンクメニューでした。

オリジナルカクテル(1200縁~1501縁)。



普通のカクテル(1200縁)。



ウィスキーベースやブランデーベースに……。



ラムベースやテキーラベースのカクテル。



もちろんソフトドリンクもあります。


掲載したドリンクメニューは一部です。
「こんなに揃っているんですね!」と驚くと
「皆さんほとんどオリジナルを頼まれるので
たまに通常メニューからオーダーされると
『そんなメニュー、うちにあったっけ?』って
びっくりします」とおっしゃっていました。
誰と行っても、どんな時でも楽しめます。

ていうか僧侶にお酒をつくってもらう、
このわくわく感といったら。

せっかくだから精進料理を味わいたい。

まずは「うなぎもどき」(600縁)。


生麩、しいたけ、山芋、ナスをすったものに
のりをのせ、こんがりと焼いて
うなぎの蒲焼きのタレをかけています。
一口味わうと、うなぎ。
うなぎじゃないけれど、うなぎ。

タレと食感でうなぎの蒲焼きを再現しています。


ああ、おいしい。ずっと食んでいたい。

店内にいたイギリス人の女性と通訳の女性から
「それだけの食材を丁寧にすって練り上げるなんて
手間がかかりますね」との声。
「だから精進料理なんですよ」と寛和和尚は答えます。
料理も手間暇かけてつくることが修行、精進となる。
胡麻豆腐をつくるにも2日はかかるそうです。

修行中ラーメン(600縁)。


修行中のラーメンってなんぞや、と気になっていたこちら。
禅宗の修行はとても厳しく、逃げ出す人もいます。
寛和和尚は手に凍傷を負い、ドクターストップが
かかったことがあるそうです。
(それでも「絶対に途中でやめない」と決めて
練炭で手を温めながら修行を全うしたとのこと)

本来であれば修行中は動物性のものも、
ラーメンも食べることはできません。
が、修行僧たちが頑張っているから、と、
先輩たちが夜にこそっと、
ラーメンをつくってくださったそうです。

何も具材がない、鍋ごと出すラーメンが
ものすごくおいしくてこのメニューができました。
これを朝参(朝の説法を聞くこと)に対して、
夜参(やさん)と呼んでいたそうです。
ちなみに禅宗の修行中は朝、昼御飯を食べて夜御飯は食べません。

そういう話を聞くと、身近なラーメンがとても貴重で、
しっかり味わって食べようと思えます。

食事のメニューはこちら。


随時線香を焚く

最初に述べましたが線香は好きに焚けます。
食事をしながら、話をしながら……

3本火をつけました。ああ、なんていい香り。


線香の香りを大切にしているので店内は禁煙です。

ついにオリジナルカクテルへ。

オリジナルカクテルメニューを再掲。


せっかく来たのだから、オリジナルカクテルも頼みたい。
すっきりしているカクテルは……と考えて

愛欲地獄(1200縁)にしました。


ハブ酒がほわんと香る、実に爽やかなカクテル。
ああ、これはハマりそうです。
それが愛欲なのか。
私はもう地獄にハマったのか。

光るコースターは和尚のお手製。


これが気に入って、愛欲だけを頼むお客様もいらっしゃるそうです。
愛欲だけを欲す。
愛欲だけを飲む。
言葉にするとパンチが効いてますね。
体が温まるので冷え性の方にもおすすめです。

和尚は全方位の話題をカバー。

寛和和尚はどんな話題でもきちんと聞いて話を広げ、
アドバイスもしてくれます。
この夜は「寺はそもそも国の機関」「お祓いとは」
「あたりまえと思っている行事の意味の無さ」
「バイクでの服装」「ココペリと雲水の共通点」
「世界」「就職」「お墓」「引き寄せ」「仏教」と
縦横無尽に話していました。
常に和尚ならではの視点があって、
3時間いても時間が足りないくらい。
いろいろ話したいな、と思っている人は
間違いなく楽しいと思います。

しかも夜のお寺、といっているだけに
悩みがある人、相談したい人も
たくさん訪れているそうです。
寛和和尚は歯に衣をきせずに、
思ったことはずばずばと伝えます。
だから、カウンターで涙する人もいるんですって。

私は相談めいた相談はほとんどしませんでしたが
ずーっとモヤモヤしていたお墓話ができて、
とてもスッキリとした気分になりました。
ちなみに和尚は「お墓はなくてもいい派」だそうです。
この話も面白いうえに視点が広がるので
機会があったらぜひ聞いてみてください。

〆はお抹茶を

目の前でお茶を点てていただきました。お抹茶(800縁、落雁付き)。


坊主バーは、お抹茶だけ、コーヒーだけを
飲みに来る人もいらっしゃるそうです。

最後はお酒にするか迷ってお抹茶を頼みました。
目の前でさささささ!と美しく手が舞い
ふんわかクリーミーなお抹茶が目の前に。
落雁は小布施堂のものです。
長野と言えば小布施堂。
名物はふくよかな味わいの栗鹿の子。
その小布施堂の落雁でテンションが上がりました。
中洲でお抹茶が飲めるなんて。
一気に心が落ち着きました。

禅宗をこんなに身近に感じたことなんてなかった。

滞在中、とてもいいなと思ったのは、
和尚が話しながらささっと掃除をされていたところです。
「気になったらすぐ掃除しないと!」と
磨き上げていらっしゃいました。
だから店内はいつもピカピカ。
目にするところは常に清々しい。

「この店は人生の集大成。自分が生きてきた世界観を
皆様と共有するところ」なのだそうです。
仏教、禅宗、曹洞宗と聞くと「堅苦しそうだな」
「戒律がどうのという世界なのかな」
「そもそも宗教がよくわからない」と
思う人がいるかもしれません。
ですが。
世界を見てきて、さまざまな仕事も経験した
和尚が話すと途端に身近に感じられるのです。
宗教ってそんなしゃちほこばることもないもんだし、
常に身近にある知恵なんだなと実感すると思います。

盆の期間はそれはそれは忙しいものの、
13日と14日はお店を開けているとのこと。
月曜・木曜は定休で、それ以外にも
通夜が入ると臨時休業されます。
Facebook「坊主バー博多」のページで
告知されるので行く前にチェックしてくださいね。

相談したい、話をしたい、
視点を広げたい、仏教ってなんなのだろう……
そんな人は夜のお参りに、坊主バーへゴー。

奥永智絵

ライター・エディター

福岡市で活動するライター・エディター。酒が進むアテ、気さくな会話、心地よさが好物のアラフォー。

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■店舗情報

店名 VowzBar博多
ジャンル バー、仏教、禅宗、曹洞宗
TEL 090-4067-3655
住所 福岡市博多区中洲5-4-23 3階
交通手段 地下鉄中洲川端駅から徒歩2分
営業時間 20:00~翌1:00
定休日 月・木曜

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